最高裁判所昭和39年9月17日

要旨
妻が婚姻の破綻について主たる責任を負い夫からの扶助を受けないようになつたのもみずからの原因によるなど原判決認定の事情 (原判決理由参照)のもとにおいては、夫が妻と同居を拒み、これを扶助しないとしても、民法第770条第1項第2号にいう悪意の遺棄に当らないと いうベきである。

主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人大池竜夫の上告理由について。
原審の認定したところによれば、上告人は被上告人の意思に反して上告人の兄Aらを同居させ、その同居後においてAと親密の度を加えて、夫たる被上告人をないがしろにし、かつ右Aなどのため、ひそかに被上告人の財産より多額の支出をしたため、これらが根本的原因となつて被上告人は終に上告人に対し同居を拒み、扶助義務をも履行せざるに至つたというのであり、右認定は挙示の証拠によつて肯認しうる。
所倫は、およそ夫婦の一方が他方に対し同居を拒む正当の事由がある場合においてもこれによつて夫婦間に扶助の義務は消滅することなく、依然存続するものであり、従つてこれを怠るときは悪意の遺棄にあたるとの見解に立つて、被上告人の行為は上告人を悪為にて遺棄したものであると主張するのである。しかしながら、前記認定の下においては、上告人が被上告人との婚姻関係の破綻について主たる責を負うべきであり、被上告人よりの扶助を受けざるに至つたのも、上告人自らが招いたものと認むベき以上、上告人はもはや被上告人に対して扶助請求権を主張し得さるに至つたものというペく、従つて、被上告人が上告人を扶助しないことは、悪意の遺棄に該当しないものと為すべきである。されば原判決には所論の違法はなく、所論は軍寛独自の見解に立つて原判決を非難するに帰し、採用し得ない。 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 松田二郎
裁判官 入江俊郎
裁判官 長部 謹콤

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